船舶用ディーゼルエンジンの冷却水って車と少し違って複雑ですよね。
マイボートオーナーもこれから整備を始める人もエンジンに興味が湧いた人もこの記事を読めばきっと理解することができます。
この記事では主に小型船舶の舶用ディーゼルエンジンの冷却水についてご紹介します。
目次
船舶用ディーゼルエンジン冷却の仕組み
船舶用ディーゼルエンジンの冷却の源は海水です。
車も船もエンジン本体を冷却するために「潤滑油」と「冷却水」を利用しています。
燃焼部や駆動部に近い部分を潤滑油が冷却し、その潤滑油を冷却水が冷却する、これが冷却の大まかな流れになります。
では冷却水の冷却は?という事で冒頭の海水の登場です。
- 車は風で冷却する空冷
- 船は海水で冷却する水冷
クルマの冷却水はエンジンから回収した熱をラジエーターにてファンで発生させた風により空冷します。
船は同じラジエーターでも風ではなく海水を通して水冷します。
海水は船底にある弁、通称「船底弁」からポンプにより吸い上げられラジエーターなどの熱交換器へ循環されます。
海水を使用するとゴミの詰まりや貝の発生、配管の腐食など思わぬ不具合によりオーバーヒートに繋がる事もありますが、冷却効率は空冷とは段違いです。
特に大型船舶の大型高馬力エンジンの冷却は空冷では追いつきません。
なので、燃料や潤滑油を十分に保有していても、冷却水に不具合があるとエンジン停止に直結します。
冷却水の種類
冷却水は2種類です。
- 冷却清水
- 冷却海水
腐食や汚損の少ない清水系統と冷却源となる海水系統があります。
冷却清水
冷却清水はディーゼルエンジンの「燃焼室周辺」を冷却します。
燃焼室周辺とはシリンダヘッドやエンジンブロックとシリンダライナの間に設けられた隙間です。
ジャケット冷却清水とも呼ばれます。
燃焼に近い高温部を冷却する高温冷却清水は、機関出口温度で温度管理され、運転時の適正温度は83℃前後です。
95℃以上になると警報や危急停止など保護装置が働くエンジンがほとんどです。
ラジエーターキャップから補給してエンジン付きの清水ポンプによりエンジン内を循環します。
冷却海水
冷却海水はエンジン各部の熱を回収してきた「冷却清水」や「潤滑油」、これから燃焼に使用される「空気」を冷却します。
海水温度により冷却効率が若干変わりますが安定した冷却が可能です。
エンジン付きの海水ポンプはゴムインペラ式で、エンジン自身の回転に合わせて吸い上げる構造です。
エンジン始動後は必ず船外排水を確認し、吐出量が少ない時はインペラを点検!羽が数枚かけているかもしれません。
近年の大型船舶は冷却清水を高温冷却清水と低温冷却清水にわけ、エンジン周辺の冷却を極力清水のみとして、一ヶ所で集中的に冷却水を海水冷却する「セントラルクーリングシステム」を採用している船がほとんどです。
冷却水のチェックポイント
重要なチェックポイントは2つです。
- チェックポイント①:水量
- チェックポイント②:消耗品
チェックポイント①:水量
冷却清水の水量は発航前に必ず確認しましょう。
漏水がなくても蒸発により減少します。発航前には必ず冷却水量を確認し、減っていれば補給しましょう。基本リザーブタンクのハイとローの間に水面があれば良いですが、一週間に一度はラジエーター内の水量も確認しましょう。
ただし、エンジン運転中にラジエーターの開放は厳禁です。
なので発航前に必ず点検と補水を行いましょう。
チェックポイント②:消耗品
冷却水周りで交換が必要な主な消耗品は2つです。
- 海水ポンプインペラ
- 保護亜鉛
海水ポンプインペラ
海水ポンプのインペラも定期的に交換が必要です。
材質がゴムなので半年に一回は点検して羽が欠けていれば交換してください。
海水ポンプは冷却の源である冷却海水を送る重要な部分です。インペラに不具合があれば一発でエンジンをオーバーヒートさせてしまいます。→エンジン停止→海上に孤立。
なので定期的に交換しましょう。
保護亜鉛
保護亜鉛は忘れがちですが交換が必要です。
海水腐食から海水系統を保護する欠かせないものです。開放点検し残量が30%を切っていたら迷わず交換してください。放置して熱交換器本体が腐食してしまうと高額な修理費が、、、。取り返しがつかなくなる事も。
なので保護亜鉛の交換もお忘れなく!
ついでに冷却清水も
冷却清水自体も定期的に交換が必要です。
一年に一回程度は全量を抜き出して新しい水道水に交換しましょう。この時、クーラントを忘れずに!入れ過ぎ注意ですので記載の規定量を投入してください。
水道水も生物です。数年放置すると腐ってドロドロになります。
なので定期的に交換しましょう。
結局大事なのは日々の点検
日々の点検はとても大切です。
- 漏水の有無
- 冷却海水の船外排水量
最低でもこの程度は点検しましょう。
冷却清水も海水も漏水していては意味がありません。
循環する冷却水の量が減ってしまうと本来の冷却能力を発揮できません。
また、海水系統は詰まりにも注意が必要です。冷却海水の船外排水量が減った時はストレーナー掃除→海水ポンプインペラ点検→熱交換器海水入り口点検掃除の順に調査します。
まとめ
今回は舶用ディーゼルエンジンの冷却水についてご紹介しました。
これでどんなことに注意すれば良いのか分かり、安心ですね。
困った時はぜひチェックポイントを思い出してください。