車でも船でもエンジンを始動した後、暖機運転をしていますか?
暖機は知ってるけどどのくらいすれば良いいんですか?
実は、この記事で紹介する暖機をすれば大事なエンジンを長持ちさせる事ができます。
なぜなら、暖機は機関士の基本でどの船に乗っても実施するもので、私はその方法を知っているからです。
この記事では、暖機を行う理由から実際の実施手順までをご紹介し、暖機の必要性をアピールしていきます。
この記事を読み終えると車と船のエンジンで暖機時間が全く違う事や、逆に暖機運転のし過ぎも良くないという事がわかります。
広告目次
暖機運転とは
暖機運転は機関を始動した後しばらくアイドリングしたり、急激に回転数を上昇させずに機関全体を暖める事を言います。
人間で言うウォーミングアップにあたる暖機運転をしっかり行わずに突然定常運転してしまうと熱応力により局部的に膨張若しくは収縮し機関本体や部品に割れ(クラック)が発生したり、組み付けの密封性が落ちて潤滑油や冷却水、排気ガス等が漏れたりする事もあります。
機関はいずれも熱エネルギーを利用し主に金属で構成されていますので、熱応力は切っても切れない関係です。熱応力を少しでも多く分散させる為に暖機運転は必須と言えるでしょう。(特に冬場)
機関が大きくなればなるほど熱応力も大きくなります。
同じガスコンロを使用した場合に直径20㎝のフライパンと直径100㎝のフライパンだと暖まり方が違うイメージ。また、大きい方が局部的に加熱され易い。
暖機の目安
暖機は基本的に潤滑油温度が40℃程度になるまで行います。
乗用車のエンジンは小さいので、機関全体に潤滑油が行き渡るであろう2〜3分程度で良いでしょう。(待てない方も最低30秒程度は、、。)いずれにしても車の場合機関を暖機しても駆動系が温まるにはそこそこ時間がかかるので最初はゆっくり走りましょう。
舶用機関は巨大な機関(家屋の2階建より大きい物もあります)を使用しているパターンが多いですのでもう少し時間がかかります。
船のエンジン大きすぎですね!どの様に暖機するんですか?
まずは暖機の熱源を下記にまとめます。
- 機関を運転する事で自身の燃焼熱を利用する物
- 外部で温められた潤滑油や冷却水を機関内に巡らせる物
小さいエンジンは自身の燃焼熱を利用しますが巨大な機関は外部からの熱を利用するんです。
広告暖機の方法(大型エンジン)
外部の熱を利用する暖機の方法をちょっと専門的ですがそのまま書きます。
潤滑油は清浄機のヒーターで温められたもの等を使用し、冷却水は基本常時運転している補機の高温清水等を利用します。
デットシップから立ち上げる場合、補機は比較的小さいものが多いので自身の燃焼熱でしっかり暖機運転後、定常運転。そこから高温清水を取り出します。
手順
- 暖かい潤滑油を機関に供給する(S/B LOポンプ・LOプライミングポンプ等)
- 暖かい冷却水を機関に供給する(補機の高温清水等を暖機機の高温清水ラインへ)
- ターニングを30分程度行う
- 機関を始動して各部点検、異常なければ潤滑油温度40℃程度になるまで運転する
補機から高温清水が取れない場合や潤滑油をヒーティング出来ない場合は潤滑油をよく行き渡らせてから始動し、各部から漏れがないかよく点検しながらアイドリング運転し、使い始めは急激な増速や急回転は避けて運転します。
アイドリング運転のやり過ぎには注意してください。近年のエンジンは過給機の高性能化により小型高出力低排出ガスを実現していますが、低回転では排気ガスがうまく排出されない場合があります。
【暖機運転】が必要な理由を現役機関長が解説。まとめ
エンジンは言葉を発しないだけで基本的には人間と同じです。
血液の代わりに潤滑油(LO)や冷却水(FW)が流れ、異常は早く見つけてあげてしっかり診てあげないと動いてくれません。
人間もウォーミングアップ無しで急に運動するとだいたい怪我をします。
2000馬力程度の中速機関で通常航海中の各気筒排気出口温度は最低でも350℃以上あります。過給機付近は500℃以上にもなり、高温冷却清水機関出口温度が80℃前後・潤滑油機関入口温度が70℃前後ですので温度差が数百℃もあります。
通常航海中でもこれ程の温度差があり、排気温度だけは急激に上がりますので始動時は出来るだけ機関本体の隅々まで温めておく必要があります。
走り出してすぐに不具合、機関停止では大事故に繋がりかねませんので念入りな事前準備が大切になります。
おしまい
暖機ってなんですか?